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- 乳がんについて
女性がかかるがんの第1位(2015年時点)、若年から高齢まで幅広く発症
乳がんは、2015年時点でわが国の女性がかかるがんの中で第1位で、生涯で11-12人にひとりが発症することがわかっています。
30歳代半ばから急増し、40歳代後半でピークを迎えますが、その後も70歳台半ばまでほぼ横ばいとなっており、30歳代以降は年齢を問わず多くの方に注意が必要です。
もっとも多い症状は“しこり”を触れる、しかし“無症状”のことも
乳がんが見つかった方の約60%が何らかの症状を自覚されていますが、そのうち、多い症状は乳房に硬いもの、いわゆる“しこり”を触れる、というものです。
乳がんのしこりは硬く、あまり動かないのが特徴です。また多くの場合、痛みを伴いません。その他の症状として、乳頭から血の混じったような分泌物が出たり、乳房にえくぼのようなへこみを生じたりすることがあります。
しかし、乳がんが見つかった方の約30%は無症状であり、検診を受けて初めてわかるケースも少なくありません。(財団法人 日本対がん協会 対がん協会報 第552号参照)
症状があればまずは“マンモグラフィ”、“超音波検査(エコー)”を
乳房になにか異変を感じたら、ご自分で乳がんかどうか判断することは難しいので、まずは受診、検査を受けておくことをご提案します。どのような検査がよいかは、受診した際に相談して決めることができます。
マンモグラフィ
乳房専用のレントゲン検査を行う装置です。乳がんの早期発見に欠かすことのできない、有効な画像診断の1つです。乳がんの初期症状である微細な石灰化や、触診ではわかりにくい小さなしこりを描出できます。
妊娠中・授乳中の方、豊胸術後の方、ペースメーカーやシャントの入っている方などは受けることはできないことがあります。なお、放射線量に関しては、将来、白血病や発がんなど、身体に影響が出るような線量ではありません。
また、検査には女性技師が携わります。
超音波検査
超音波の反射を画像化することにより乳房内部の状態を調べる装置です。乳腺が発達している若い方でもしこりが見つけやすく、小さな変化でも発見できるのが特徴です。
一方、乳がんの石灰化を画像に映し出すことは難しく、がんではない良性のしこりなども映ってしまうため、良性か悪性かを見分けることが難しい場合もあります。
放射線の被害がないため、妊娠中の女性でも検査を受けることが可能です。痛みを伴わず、身体的苦痛がほぼないのもメリットです。
乳がんを疑うしこりなどには“組織検査”が必要
検査で乳腺に何らかの異常が見つかっても、その半数以上は良性であり、画像検査のみでほとんど判別可能です。しかし良性かどうか判別困難な場合は、しこりなどの中身(細胞・組織)を回収して確認する必要があります。
- 吸引細胞診
- 針生検
- マンモトーム生検
- 外科生検
乳がんが見つかったら(治療の流れ)
追加で画像検査などを行い、進行度(大きさ、リンパ節や他臓器への転移の有無)を調べます。これまで全ての結果を総合的に判断して、
① 可能であればまずは、 手術(=乳がんをなくす治療) を行い、
② その後、 薬物療法±放射線療法(=再発を予防する治療) を追加します。
病状によっては、手術前に化学療法を行う(術前化学療法)方がよいと考えられる場合や、手術そのものを施行しない方がよい場合もあります。
手術術式について
① 乳房温存(部分切除)術:乳がんのある部位の乳腺を一部のみ切除します。
② 乳房切除(全摘)術:乳がんを含む乳腺全体を皮膚・乳頭・乳輪とともに切除します。
③ 乳頭乳輪温存皮下乳腺全摘術:乳頭乳輪は切除せず、乳腺のみ切除します。
乳がんのことだけではなく、からだの状態、生活環境やライフスタイルなど、今後のご希望を相談しながら治療方針を決定します。
薬物療法とサブタイプについて
乳がんの性質(サブタイプ)や進行度により術後(±術前)に行う薬物療法を選択します。
薬物療法にはホルモン療法と化学療法や抗HER2療法などの分子標的治療があります。
ホルモン療法は5~10年間、化学療法は長くて6カ月間、抗HER2療法は1年間行います。薬の作用や副作用により投与量・投与方法・期間などを調整します。
① ホルモン感受性陽性/HER2陰性タイプ
ホルモン受容体陽性は総じてLuminal(以下ルミナル)と呼ばれ、乳がん全体の60~70%程度を占めるタイプです。
〇 ルミナルA様
増殖能力が低いルミナルA様は、典型的で女性ホルモンをエサとして増殖するため、ホルモン療法(女性ホルモンの働きを抑制する治療)が推奨されます。なお、リンパ節転移が4個以上ある場合や、がん細胞の悪性度が高い場合には、乳がんの再発リスクが高くなるため、化学療法を追加する場合があります。
〇 ルミナルB様
ルミナルA様に比べてがん細胞の増殖能力が高いため、多くの場合ホルモン療法に加えて化学療法も行います。再発のリスクなどを考慮して、抗がん剤を複数組み合わせて使用します。
② ホルモン感受性陽性/HER2陽性タイプ
ホルモン受容体とHER2のどちらも陽性であるため、ホルモン療法とともに抗HER2療法と化学療法を併用することが推奨されています。
③ ホルモン感受性陰性/HER2陰性タイプ
乳がん全体の10%程度を占め、ホルモン受容体をもたないため抗HER2療法と化学療法の併用が推奨されています。
④ トリプルネガティブ(ホルモン感受性・HERいずれも陰性)
薬物療法によるがん細胞攻撃の標的となるホルモン受容体とHER2タンパクのいずれも持たないタイプで、通常化学療法のみを行います。また、特定の遺伝子発現が陽性のトリプルネガティブ乳がん(再発例のみ)に対して、新たに「免疫チェックポイント阻害薬」が使用できるようになっています。
放射線治療について
放射線治療の目的は、手術後に乳房または胸壁・リンパ節に残っているかも知れないがん細胞を消失させて再発を予防することです。
〇乳房切除術を受けられた方 リンパ節転移やリンパ管内病巣が多い方に対して、再発を予防する目的で、手術後の胸壁と隣接する鎖骨の上下や胸骨の傍らのリンパ節への放射線療法を行っています。
〇乳房温存手術を受けられた方 手術後に温存乳房(場合によっては隣接リンパ節も)への放射線療法を行うことが標準治療です。
これを平日の週5日、5週間にわたって連続して行います。1日1回の治療は、5~10分程度です。状況によっては、1回の放射線の量を少しだけ増やして回数を減らし、3.5週間に短縮する方法もあります(寡分割照射法)。 さらに、切除後の乳腺内にがんが残存しているような場合は追加照射を行います。
治療後について
手術や放射線・化学療法が終了したのち、温存した乳房や反対側に乳房に乳がんが再発または新規に発生しないか、定期的(3カ月~1年ごと)に乳がん検診(超音波検査・マンモグラフィ・血液検査など)を行います。